1. やっぱりJAZZを聴いてみたい
憧れのJAZZ。大人のJAZZ。聴いてみようと思うものの、JAZZの世界が深すぎて、私なんかが聴いて大丈夫なのだろうかと思ってしまいます。さて、ホントのところJAZZってどうなのでしょう。
音楽のスペシャリスト吉崎真矢さんに、JAZZのあれこれを伺う『JAZZの世界へようこそ』。JAZZをこれから聴きたい人、すでに聴き始めている人、JAZZはちょっと聴かないな…の人、すべての人に届けたい連載の始まりです。
-JAZZを聴き始めたきっかけは
もともとHIP HOPを聴いていたんです。HIP HOPは、サンプリングの文化。そこにJAZZが頻繁に使われていて、とにかく「聞いてみなくちゃ」と思ったわけです。
JAZZという響きにはなんだか威厳があってお気楽には聴けない印象がありますが、いざ聴いてみるとグルーヴ感がすごくて、楽しいんですよ。すぐに夢中になりました。もともと、ドラムが好き、だからグルーヴ感は 自分にとって すごく重要なんです。
ードラマーについて聞かせてください。
ドラマーでは、ロイ・ヘインズ(現在90歳の現役。誰もが魅了されるリズムとフィーリングに満ちた伝説のジャズドラマー)、バディ・リッチ(ビッグバンドの名ドラマー)、バーナード・パーディ(ハートフルでダイナミックな演奏を聴かせてくれる)が好きです。ビートとリズムが好きなんです。だからグルーヴ(カラダを動かしたくなる感覚。ノリやうねり)が僕にはささる。
日本にも、もちろん素晴らしいドラマーはたくさんいますが、黒人の持って生まれた感覚、リズム感やビート感は特別で、マネできないんです。叩く力が強いし、パワフルだし打ち感が違う。
ソウルフルなジャズでは「ドラムブレイク」と呼ばれるドラムソロのパートがけっこう あるのですが、打ち感がタイトだとうれしいですね。
ー伺っていると、JAZZの自由な雰囲気が伝わってきます。
JAZZって、意外に荒々しい面もあったりします。上品に静かに聴く印象があるかもしれませんが、それだけでは ありません。ライブなんて本当に自由でノリノリ、観客のスタイルもさまざまです。スーツからTシャツや短パンまで。キャップを被っている若いファンもいます。しっとり聴くのがJAZZというルールはないですから。
ーこれからJAZZを聴こうと思っている人に、何を伝えたいですか。
日本人はメロディー重視の民族ですから、JAZZピアノから聴き始めるといいかもしれないですね。聴きやすいのはビル・エヴァンス。誰もが知っているアメリカのジャズピアニストです。ピアノトリオの傑作『Waltz for Debby』は、やはり名作ですね。キース・ジャレットも聴きやすいと思います。1975年ケルンのオペラ座で演奏された伝説の1枚『ザ・ケルン・コンサート』は、彼の即興に驚かされます。メロディーと構成の美しさが絶品。聴くというより体感する美しさに酔いしれる名盤です。愛しさと慈しみが指先にあふれ、魂が宿った鍵盤がメロディーを優しく紡いでいく『The Melody At Night, With You』は、純粋にピアノが胸に沁みる1枚、聴きやすいと思います。
ーどんなふうに聴きましょうか。
好きなアーティストをずっと追いかけるより、いろいろと聴く方が楽しいと思いますね。「これでなくちゃ」と何かに縛られるのは、音楽を聴くうえでもったいないと思います。
じゃあ、どんなふうに広げていくか。アマゾンでレコメンドされる盤が、意外にいいんです。見事に、趣味をよくわかっていて、オススメですね。
ーオーディオについて教えてください。
「音楽を持ち歩く時代」、コンパクトなものでOKだと思います。ちょっとこだわったヘッドホンやイヤホンがあれば十分。より高音質のものがほしくなったら、その時に買いましょう。遅すぎるなんてことはありません。マニアになる必要もないと思いますよ。
ーJAZZと言えば即興。語れるのか不安です。
確かに、たとえばライブに行って、一年前の方が自分には合っている、なんてことはあります。プレイヤーのコンディションでよしあしが露呈してしまうこともありますし、聴き慣れている人にはそれがわかってしまうこともある。でも、よしあしがわからなくても、何の問題もありません。
大ヒットした映画『セッション』の評価も二分しています。「あんなのJAZZじゃない」と言う人もいれば、「あれが人間の本質だ」と絶賛する人もいる。正解はないんです。
JAZZはとにかく自由な音楽。そして比較的穏やかで平和なジャンルと言われています。あんなにカテゴリーが多彩なのに、対立することはなく、ウエルカムの空気が強いんです。
映画『スウィングガールズ』から入ってもいいし、タモリさんから入ってもいいんです。
本や雑誌でうんちくや哲学を学んでから聴く必要は感じません。楽しむことが大事です。
吉崎真矢
二子玉川 蔦屋家電屈指のこだわりの音楽フロアを仕掛けるスペシャリスト。
直接買い付ける中古レコードにはJAZZの名盤やレア盤など注目の作品が並び話題に。
明確で歯切れ良い音楽論は「なるほど」の連続で聞いていて気持ちがいい。
クールな雰囲気に相反し、楽しめばOKという気さくな笑顔が印象的だ。
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