写真の時代だからこそ、カメラの魅力を伝えたい。
Interview10 コンシェルジュに聞く 。
第10回は、写真コンシェルジュの 黒澤真美さんです。
ーなぜカメラの世界に
小さいころから、とにかく機械が好きなんです。なぜと聞かれると困ってしまうのですが、機械が動くしくみが好きというか、しくみを見るのが好きというか…。機械はこのうえなく美しい存在だと思っているんですね。精密で人間的で機能的で。
人の手から生まれた魔法とでも言うべき機械、そのパーツ、技術、なんてムダがないんだろうとか、そのムダのなさがなんて美しいんだろうと、感動してしまいます。
機械はアート、だからカメラも美しい。カメラが好きですね。
ー写真はいつから
本格的には大人になってからです。中学生のときは写真部ですが、ピンホールカメラをつくって、機械の面白さに夢中になっているくらいで。大人になってから、写真を撮るむずかしさを知りました。
巧いも下手も気にしたことがなかったのですが、いざ撮るとなると本当に難しい、そう感じたときから,です。納得がいく写真が、本当に撮れませんでした。
写真は光と影がすべて。その光を見つけるのが、大変で…。その光が見えるのがプロですね。写真の評価は人それぞれですから、なんて素晴らしい作品だと言う人もいれば、なんだかよくわからないという人もいる。でも、光を見つけているかどうか、それはプロが見るとすぐわかりますね。
ーライカについて聞かせてください
ライカのカメラは、シンプルです。ボディにレンズ、そしてのぞき穴。液晶ファインダー化するカメラが多いなか、ライカはのぞき穴、味わい深いですね。
デジカメは確かに使いやすいんです。顔はきれいに仕上げてくれるし、暗い場面も明るく撮ることができる。補助装置がいっぱいで、ひとにやさしいカメラと言えます。
もちろん、それはそれで大切なこと。予想通りの写真に仕上がりますから。ビギナーでも、もう何年も写真を撮り続けている人も、出来栄えに大差はないといっていいかもしれません。それがデジカメのいいところですね。
それに比べて、ライカには予想外の1枚がある。撮った人間を表現しているというか、写真に個性があるというか…。たとえば同じカメラで同じ場所から同じ風景を10人が撮るとして、10通りの写真ができあがります。同じ条件なのに、撮った写真は明らかに違う、そこに感動があります。
同じ風景のなか、建物に魅かれるひと、夕日に魅かれるひと、その違いが写るのでしょう。撮ったひとの心が不思議に写りこむというか、心情が写るというか…。
たとえば、「写真を撮る仕事」の呼び方はいろいろなんですよ。
写真家、フォトグラファー、カメラマン…。
写真家は自分を出す。フォトグラファーは写真を観た人を感動させる。カメラマンは誰が見てもわかりやすいもの撮る。呼び方に違いがあることから、写真の違いが生まれることがわかりますよね。
ーライカはなぜ愛されるのでしょう
つくりがシンプルなので、操作性もシンプル。それも魅力です。
定番のMシリーズが人気なのもシンプルだからこそ。カメラはシャッタースピードとしぼり、露出補正がすべて、それだけ意識すれば写真は撮れます。
つまり、洗練されたカメラはそぎ落とされている…ということですね。いらないものはいらない、その潔さは魅力です。だから、何年たっても、流行に関係ない美しさがあります。シンプルだから丈夫。操作がシンプルだから丈夫。ライカ、すごいでしょ。
そして、レンズです。さらにいうと「ぼけ」がいいんです。
「ぼけ」は世界共通語、世界では「 Bokeh」と呼ばれています。
日本の「わび」「さび」と相通じる価値観が、ぼけ味をうまく融合し、ライカの個性を際立たせたのでしょうね。ライカのぼけは、ほかの追随を許しません。それは、レンズのチカラです。
たんに「ぼければいい」ということではなく、フワッとやさしいぼけ味…ですね。
開発力はもちろん、ひとつひとつ精密にていねいに仕上げる技術も、ライカの写真を支えていると言えます。ドイツ生まれのライカはマイスター制度の下、素晴らしい職人が育つ環境がある。そこも大きいと思います。
写真から質感が伝わってくるカメラ、たとえばやわらかさやかたさ、肌のかんじも見て取れる。
それがライカの強さです。佇まいまで写すカメラと言えますね。
L版1枚でも、その違いは明らかです。
ーライカが長い間愛されている理由、なんでしょう
そもそも、写真は「記録するためのもの」。
カメラは、携帯しやすいコンパクトさと、機動性、丈夫であることが重要視されていました。
コンパクトで携帯しやすく、頑丈なカメラという点でも、ライカは評価されています。
時代を切り取った素晴らしい写真をいくつも残していますね。
そして、その伝統にとらわれることなく、常に革新的に変化もみせてくれる。
継承される変わらないものと最先端がともに生きていることが、驚くべきことですね。
ーはじめての人にアドバイスはありますか
誰でもみんなはじめてです。
私も、はじめてのときの気持ちを忘れないようにと心がけています。
一緒にステップアップできるお店でありたいと思っていますね。
初心者の方もベテランのみなさんも、ぜひ、写真を見せてください。
みなさんの愛すべき写真の楽しみ方を、一緒に考えさせてください。
いろいろと情報交換をしながら、次へのステップアップを一緒に考えさせていただければ、うれしいです。
インターネットで誰もが写真をアップする時代、写真を楽しむひとは増え続けています。ぜひ、スマホに限らない写真の楽しみ方も、インターネットにアップすることで終わらない写真の世界を提案できるフロアにしていきたいと思います。
黒澤真美
カメラの世界は大人になってからというから驚きである。
現代の最先端のネット環境も踏まえて写真をどう表現すればいいか、どう楽しめばいいか、豊富で専門的な知識で初心者にも、ていねいに応えてくれる。
若い世代から熟年世代まで幅広く支持されている貴重なコンシェルジュとして活躍。
0コメント