大人だから楽しめる すてきな絵本の世界


Interview6 BOOKコンシェルジュに聞く
第6回は、BOOK 絵本コンシェルジュ 小川舞さんの登場です 


ー絵本との出合いについて教えてください。

実は小さいころ、本が大好きで いつも読んでいたとか、本への想いがひときわ強いとか、そういう子どもではなかったんです(笑)。

ここ(二子玉川 蔦屋家電)がオープンする前も絵本を担当していて、二子玉川 蔦屋家電がオープンするから絵本を担当しないかというお話をいただいて、素直にうれしかったです。働くことが決まってから、代官山で研修したのですが、その3か月がすごく濃厚で刺激的でした。絵本と本格的にかかわるようになったのは、大人になってからですね。


ー大人になってから、絵本の世界が広がったわけですね。

はい。小さいころには気づかなかった絵本の楽しさ、面白さ、大人だからこそ、気づく新しさは多いですね。たとえば、古田足日さんの『おしいれのぼうけん』。小さい頃は、怖いかんじにドキドキしたお話ですが、今はその背景、登場人物の心情まで深く読み取れます。

中川李枝子さんの『ぐりとぐら』は、中川さんの違う作品に『ぐりとぐら』の動物たちが登場したり、人間的な表情で楽しませてくれたり、つっこみどころの多い愉快な作品です。新しい発見がいっぱいで楽しめます。


絵本は子どもが幸せに育つツールですが、大人が子どもにかえれる場所でもある。そういうフロアをつくりたいですね。


ー絵本の選び方にアドバイスをしてください。

何歳向けとか女の子向けなどカテゴライズされることが多いですが、ここではそうはしていません。かいじゅうが好きな女の子もいるし、優しい雰囲気が好きな男の子もいます。ちょっと複雑な内容を理解できる子もいれば、シンプルな絵本を楽しむ大人もいますし。

自分が興味のあるもの、「読みたい!」と思うものを読む、それが一番だと思います。


ーどんな絵本が好きですか?

暗い絵本が好きです(笑)。

大人のための絵本にも読み応えのある素晴らしい作品は多いですね。

ノスタルジックな絵が印象的なショーン・タンの作品は大人が読んでこその面白さがあります。『アライバル』は、言葉のない絵本。絵の持つエネルギーに突き動かされる感覚で、心のなかを様々な言葉が埋め尽くします。『遠い町から来た話』は言葉のある短編集。不思議な空気と立体的な視点から描かれる世界、『アライバル』とは違う深い感動があります。

クリス・ヴァン オールズバーグの『ハリス・バーディックの謎 』は、フィクションとノンフィクションの境目がわかりにい不思議な仕掛けが大人心をくすぐります。こたえがないのも魅力ですね。絵が放つエネルギーに吸い込まれそうな作品です。

作家は一つひとつに魂を込め全身全霊で絵を描いています。原画展に行くと、その生命力に驚きます。そんな作品が何枚も重なり一冊の作品ができあがるのですから、サイズがマチマチだったり、ちょっと価格が高いことに頷けます。

『ハリーポッター』シリーズや『チョコレート工場の秘密』(映画は『チャーリーとチョコレート工場』)も好きです。不思議な話、ファンタジーが好きですね。

『ピーターラビット』のシリーズも、優しい雰囲気ですが、影のある動物が登場します。絵本といえども、物語りのなかで抱えているものが多いですよね(笑)。

海外の作品は絵が深くて美しいと思います。大人の心にもしっかり届きますね。


ー大人に贈る絵本

絵本は大人が子どもに贈るものだけではないと思います。子どもが大人に、大人が大人に贈るのも素敵です。

絵本をおかあさんに贈る、友だちに贈る。絵本でプロポーズされる方もいらっしゃいます。愛にあふれた絵本の言葉は、プロポーズする方にもされる方にも特別ですね。





ー読み継がれるのが絵本。新しい作家が参入する難しさもあるように思いますが…

書店が作家のファンになること、作家を育てることが大事だと感じます。出版社の押しではなく私たちコンシェルジュがしっかり見ることが大切ですね。


ーオススメの作家は?

ロンドン出身の作家、いまい あやのさんはイギリスやアメリカで育ちました。やわらかいタッチ、優しい色づかいに心地よさがあります。

ユーモアたっぷりのくどうのりこさんも大好きです。『ノラネコぐんだん』シリーズは、ねこたちのふてぶてしさといい、書き込みの細かさといい、大人も楽しめるシリーズです。動物たちの人間味?あふれるしぐさや表情、可笑しくて味わい深いです。


ー児童書はいかがでしょう。

『ワンダー』は丁寧につくられた素晴らしい作品です。テーマは重たいですが、いくつもの視点がおりなす物語は、感情移入しやすく、しっかり考えることができます。主人公がたくさんいる作品と言っていいかもしれません。

児童書も絵本も、登場人物の気持ちを想像するところに大きな意味があります。なぜ、こんなふうに考えたんだろう。なぜここでこう決断したんだろうと、ぜひ「なぜ」を膨らませてください。




ー個性的なフロアになっていますが。

福音館書店や岩波書店など、読み継がれている本も充実していますよ。子どものころに読んだ本に出合えるフロアです。


私が小さいころ大好きだった『セーラームーン』もあります。ここから天体や宇宙に想いが膨らみました。きっかけは何でもいいと思います。何かから広がる世界を想像できるフロアにしたいと思い『セーラームーン』の近く、手の届くところに星空の本を置きました。冬の夜空はひときわきれいです。興味が広がるといいですね。



「住」のコーナーでペットの本も担当しています。2Fのハウスキーピング側にあります。ネコを飼っているのですが、最近のペット事情は命への考えがやや軽いように感じます。ペットを飼うということがどういうことなのか考えてほしくて、こんな(下)コーナーもつくりました。



ー絵本のフロア、活気と熱気を感じます。

もちろんファミリーが多いですが、絵本を探していない人がふと発見する楽しさも意識しています。”なつかしい”作品に偶然出合う。大人が楽しめる絵本を見つける。お子さまはもちろん、大人にとっても楽しい空間になるよう、頑張りますので、ぜひ のぞいてください。




小川 舞

1982年生まれ

印象的な笑顔は天真爛漫、そこから こぼれる言葉の力強さに驚く。

無限のポテンシャルを感じさせる伸び盛りのコンシェルジュが次に何を仕掛けてくるか目が離せない。