時空と空間をつなぐ写真の世界
Interview 2 写真コンシェルジュに聞く
第2回は写真コンシェルジュの中悠紀さんです。
ー写真との出合いについて
はじめて写真を撮ったのは小学校の修学旅行。インスタントカメラ「写ルンです」を3台持参したのですが、すぐになくなり現地で7台追加購入しました。とにかくシャッターを切る音、シャッターを切る感覚が楽しくてたまらなかったんです。カメラ屋さんで写真が出来上がるまでのワクワク感も鮮明に覚えています。
中学では剣道部、高校では剣道部を経て帰宅部でした(笑)。でも、いざ進学を考えたとき、写真の世界へ行こうと自然と決めていました。
専門学校でカメラマンと写真家が違うことを学びました。クライアントの依頼を受けるのがカメラマン、撮りたいものを撮るのが写真家。写真家 有元伸也先生(変遷する社会の生命力を撮る写真家)の授業が刺激的で興味深くて・・・、もう写真家への道しか頭になかったですね。
ー好きな写真家について
(たくさんいるので、すごく迷います・・・と考えて)
まず、ウィリアム・クラインですね。50年代、60年代の都市を切り抜く写真がとにかく かっこいいんです。カラー写真だと色に反応してシャッターを切ってしまうけど、モノクロはフォルムや人物のポーズに反応する。だから、モノクロ写真が好きですね。最近の写真はコンセプトありき、言葉が添えられないとなんだかわからない。難しい写真の時代・・・という気がします。でも、写真が写真である、写真そのもので勝負できるものにチカラを感じます。それが、ウィリアム・クラインです。画家であるレジェの下で絵画を学んだり、広告のスチールを撮ったり、コンテンポラリーアートと商業写真、両方の目線があると言えます。僕は都市に集う人間に魅力を感じていて、だから都市の写真に魅かれるんだと思います。
日本の写真家では畠山直哉、アイデンティティーが明確で一貫して筋が通っている骨太なところが好きです。写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞している実力派。石灰石鉱山の現場、都会の建築群や地下水路など、独特の視点で都市の流れや構成を撮影していて、とにかくエネルギーを感じます。石灰工場の発破の瞬間など、計算し尽してカメラを構えていて、とにかく驚きます。だからこその迫力ある写真なんだと思います。
ドイツを代表する偉大な写真家であるアンドレアス・グルスキー (最高値がついた写真『ライン川Ⅱ』が有名)も好きです。まず、写真の大きさと密度に驚きます。彼が影響を受けた人、影響を与えた人、そんなことを意識しながら写真を見ると、さらに写真は深くなりますね。写真はしっかり語りますから。
ーカッコイイ写真について
僕にとってのかっこいいは、「自分」がある、個性があるものですね。どうも東京は個々を捨てるかんじ、自己犠牲の文化みたいなところがあって、残念です。ファッションも生き方のオリジナルがないというか・・・。個性がある写真がカッコイイですね。そういう意味でも海外は刺激的です。
ー最後に
ぜひ、写真展に足を運んでください。今回は本を紹介しましたが、いい写真を観ることで視界が広がります。2016年秋には現在改装中の『東京都写真美術館』(恵比寿ガーデンプレイス内)がオープンします。こちらも楽しみにしてください。
中悠紀:
1991年2月生まれ
静かでソフトな口調だが、その知識の豊富さは圧巻の好青年。写真に対する姿勢はあふれんばかりの写真愛から。11月には撮影のためパリへ。
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