文具が好き、雑貨が好き、モノが好き
Interview8 文具コンシェルジュに聞く
第8回は、文具コンシェルジュ 尾谷美紀子さんの登場です
小さいころから、文房具が好きです。学年が変わり新学期が始まる時、文房具が新しくなる。すごくうれしかったですね。お正月、貯まったお年玉は我が家は親に預けるルールだったのですが、そのかわりデパートで文房具を見るのが恒例だったんです。それが楽しくて…(笑)。文房具屋さんのゴチャゴチャした空間から好きなものを探し当てる。それがたまらなく好きでしたね。バービー人形やシルバニアファミリーの細々したものが好きな感覚と似ていると思います。
京都の大学に進学し、そして卒業。さぁ就職と考えたとき、なんとなく手にした情報誌に、高級筆記具のお店が開店するという記事を見つけ、面接に行き、即就職です(笑)。
高級筆記具の専門スタッフとしての日々が始まりました。モンブランやパーカーといったブランドを扱っているのですが、オーナーのポリシーが際立っていて、とても勉強になりました。
たとえば、今はいろんな店舗で高級筆記具は対面販売されていますが、オーナー曰く「筆記具は座って使うものだから、座って書かないとわからない」。
従ってお店はお客さまとスタッフが座って対面するカタチでした。アクセサリーを選ぶように筆記具を選ぶ。それがコンセプトでした。シーンで筆記具を使い分けてほしいなというイメージですね。
100年先も使える万年筆を愛する。文化的な社会でしょ。そこを大事にしていました。
万年筆が好き、文具が好き、雑貨が好き、モノが好きなんです。きっと嫌いな人はいないと思います(笑)。小さなモノって切り口が多いでしょ。子どものころから関わっている身近なものですし…。
ー進化する文具がある一方、変わらない伝統的な文具もあります。
万年筆はメカニズム的に完成しています。単純なつくりですから、もう進化のしようがないくらいです。
文具の技術的な面は日本がトップクラスです。消えるボールペンも日本発。万年筆も日本の製品が書きやすいですね。でも海外のメーカーにはブランド力があります。歴史とデザイン性でしょうね。ドイツ製は品質が安定していますし、イタリア製はデザインや色彩が美しく、所有する楽しみがあります。
ー筆記具、どう選ぶといいでしょうか?
自分の文字に合う筆記具を探される方もいらっしゃいます。何度も書き味を確認されて、こちらも楽しくなります。
年齢を意識して選ばれる方もいらっしゃいます。価格もありますが、デザインやグリップの色、素材などで選ぶ。アクセサリーと本当に近いと思います。社会人になっていいボールペンを使ってみようという方も確かに多いですしね。
シーンに合わせてという選び方もOK、書きやすさもOK、デザイン優先もOK、自分の選び方でいいと思います。リーズナブルな万年筆でも性能や書き味が驚くほど劣るわけではないですし。
高価なものはペン先が14金だったり18金だったり、耐久性があります。大事に使うと長く使えます。たとえば1905年製の万年筆が今も使えたり。ペン先に力を入れずに書けるのが万年筆です。作家たちが万年筆を使うのは、たくさんの文字を書くのに実用的だからです。
文字が乾かないうちに手をつくと手が黒くなったりしますが…。気になる方はすいとり紙を利用したり、乾きやすいインクを使うといいかもしれません。インクの良し悪しもやっぱりあります。
以前、富士山に登ったとき、アンケートに答えたことがありまして、その時渡されたボールペンの書き味が、もう素晴らしくて、大好きなんです。日本の技術に感動です!
ー書く文化、変化していくでしょうか。
パソコンを使う作家も増えていますが、紙文化がなくなるわけではないと思います。特別なときは書きたくなるでしょ。御礼状だったり、ご挨拶の文章だったり…。
ーどんなフロアにしましょう
つくり手の顔が見えるこだわりの商品を展開しています。お客さまとお話をしながら、物語りを届けられるフロアにしたいですね。
尾谷美紀子 1977年生まれ
穏やかな雰囲気で周囲を包み込むやわらかいコンシェルジュは、知識、丁寧なアプローチ、蓄積された経験を持ち合わせる素敵な女性。スペシャリストとはこういう人を言うのだと感じさせる。
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