若い世代に読んでほしい ワークスタイルの本

Interview1 BOOKコンシェルジュに聞く

第1回はBOOK ワークスタイルコンシェルジュの新庄雅文さんです。



ーワークスタイルのフロアについて

ビジネスマンというと会社勤めの男性という印象ですが、ワーカーだとフリーランスや経営者、働く女性も含めて広がる。そんな思いを軸にフロアを展開しています。働くすべての人を対象にした本選びですね。


ーネットではなく本の理由

インターネット上でも様々な情報が手に入る時代、ワークスタイルについてもネット上の情報は一見充実していますが、やはり本を読んでほしい。それは僕が昭和の人間だから・・・という理由だけではないんです(笑)。

編集の仕事に長く携わっていたので、文字に対するプロたちの思いと綿密な仕事には読むべきものを感じます。出版までの過程で、著者はもちろん何人もの言葉に対する思いが積み重なっている。だから言葉の重みがすごい。消去可能な文字は文脈やストーリー性に欠けるものが多く、書き手の思い入れが見えてこないものもあります。ぜひ、本を読んでください。


ー本で経験することはできない

だからといって本を読めばいいかというと、それも違う。僕の強みは読むことと経験の両方があること。もちろん失敗や苦さも含めての経験です(笑)。若い世代に経験しろいう方が物理的には無理な話です。でも、本を読むことで、いつか「あ、このことだった」と気づくことができる。それが本のチカラですね。気づくか気づかないか、この違いはすごく大きい。残念ながらいい経験をしているのに、気づかないままということがありますから。

ただ、本を読むことで失敗が少なくなる可能性もあって、失敗しないことがいいことかというと、そんなことはない。そこに問題を感じます。本のマニュアル化、課題ですね。

僕たちの時代は経営哲学の本はあってもライフスタイルの本はなかった。松下幸之助一本です(笑)。今のマニュアル的な本は、若い世代の大胆さや行動力に制限をかけてしまう印象は否めません。


ーバランス感覚の時代

バランス感覚は意識してほしいですね。事象を対極から見る、俯瞰する、バランス感覚は養われていくと思います。たくさんの意見や視点、方向がバラバラの考えを集約するスキルは常に求めらる社会、つまりバランス感覚がないと、気づかないうちに利己的な考え方を生み、信頼されない状況を招きかねない。




ー文庫本2冊がワークスタイルを支える

『藤田晋の仕事学 自己成長を促す77に新セオリー』と三木谷浩史の『成功の法則 92ケ条』、オススメです。文庫本2冊なら若い世代にも購入しやすいのではないでしょうか。ボリュームといい内容といいお得だと感じます(笑)。株式会社サイバーエージェントの藤田晋氏は業界でも評判の優秀な人物。力強い内容は説得力があります。入社間もない世代に読んでほしい1冊です。楽天の三木谷浩史氏の本は入社5年目以上、ある程度働いてきたワーカーが読むべき哲学やリーダー論ととらえてください。


ー社会情勢も含めてワークスタイルを考える

『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、みにつけるべきこと』(山口揚平)は胸にグサグサ突き刺さる作品。格差社会、ヨコ社会へのシフト、刻々と変化する社会においてどう生きるか、未来を生きる若い世代にこそ読んでほしいですね。

青春の背景がまったく異なる若い世代のコントラストが鮮明な『若者から若者へ 1945←2015』(落合由利子)は、ワークスタイルの書物とはかけ離れますが、戦争という大きな現実に生きた若い世代にあてた今の若い世代の手紙は心を打ちます。その言葉に希望が見える1冊です。


本を読むことはもちろんですが、本を振り返ることも大事なんです。付箋なりラインマーカーなり、自分なりの方法で立ちかえると、本は生き続けます。




新庄雅文

1959年1月生まれ 

編集部での経験を生かしてコンシェルジュに。苦い経験ばかりですよと笑ってみせた表情に人生の尊さを感じさせる。ペンと紙から生まれる言葉の美しさを愛する姿勢が選書に息づく。